ある日、神戸市が出している広報の新聞で紅葉特集がやっていた。興味ありげに眺めていたら、「めっちゃ綺麗!」と声を上げたくなる写真があった。記事を読むと、「保久良(ほくら)神社」と書いてあった。
神戸の阪急岡本駅から北上したところにある。絶対に行きたい、そう思った。
そういえば、、
3日前に味覚が消えたので、一昨日PCR検査をしたらコロナ陽性だった。
は?
思えば、この1週間は体調がおかしかった。
8日前:微熱、喉の痛み(抗原検査:陰性)
7日前:38度の発熱
6日前:病院へ。医者に「ヒトメタニューモウイルスですかね」とか言われる。赤ちゃんがかかりやすいウイルスらしい。私は大学院生ですけど。私はこの医者の言葉をずっと信じていた。コロナじゃないと思っていた。
5日前:喉の痛みが治らない。鼻水もでてきた。(2度目の抗原検査:陰性)
4日前:コロナじゃないと思っていたので友人と焼肉に行ってしまう。鼻水が出て、咳き込む私が「しにそう...」と言ったところで、友人が何かを察し、マスクをして「もう帰ろっか」と言う。
3日前:味覚が消える。鼻が詰まっているからだろうと思ったが、知人に言うと「コロナだよそれ」とのこと。
2日前:ようやくPCR検査に行くことに。ついでに保久良神社に行こうとしたが、しんどくて途中で帰宅。
昨日:PCRの結果、コロナ陽性だと判明。
今日:保健所に問い合わせたところ、自宅療養期間はもう終了しているとのこと。なので保久良神社再チャレンジ。(←どんだけ神社行きたいねん)
自宅から神社まで3キロ。
これは歩ける。
病み上がりの身体だが、歩きたい気持ちが強すぎて気付けば駅を通り過ぎ、歩いて直接神社に行くことに。
でっかい家々を通り過ぎていくと、神社の参道口に到着。
私は間違えて車道をひたすら歩いていた。
がんばろう、と言われたので頑張るしかない。
肺がしんどい。心なしか、めまいもしているかもしれない。
しかし、1人である。ここで倒れても誰も気づいてくれない。でも怖くはなかった。
周りの色づいた木々に囲まれている今この瞬間があまりにも心地よく、恐怖よりも多幸感が勝っていた。
ベンチやコンクリートにもたれながら、休み休み進む。
山の中で私は自由だ。
しばらくぐねぐね道を進んでいくと、ついた。
境内にはキュートな干支がずらりと並んでいた。
かわいい。
どうみても猫。
干支に混じるんじゃない。お前は猫だろう。
可愛さを追求したあまり別の生物になってしもうとる。
帰りは行きと違う道で歩くことに。
しかし、本当に駅に着くのか不安になり、目の前を歩くおじさんの背中に声をかけた。
「この道で岡本駅につきますかね?」
と聞くとすぐに振り返ってくれ、ちょっと驚いた表情を浮かべた後
「わたしも途中まで一緒なのでついてきてもいいですよ」とのこと。
あざっすおじさん!
しばらく無言のまま歩いていたのだが、
これはコミュニケーションをとるべきなのか?と思い直し、
私は「道がわからなくなっちゃって(笑)」と雑談を始めようとしたのだが
「....」
おっちゃんはムハンマドならぬ無反応。
おっちゃん。ごめんな。コロナ病み上がりなのに声かけて。
そんなの知ったこっちゃないと思うけど、多分普通にあんまり喋りたくなかったんやね。
しばらく無言で歩く2人。
合法ストーカーとはこのことか。
おっちゃんの背中。
あまりにも綺麗すぎる紅葉。
綺麗なのでいっぱい写真を撮りたいのだが、あまり時間をかけるとおじさんの背中が遠くなる。
ちょっと撮って、おっちゃんの背中を追いかけて、また振り返って紅葉をみて。
そんな感じでどんどんくだっていった。
大きな家々が見えてくると、おじさんは足を止めて振り返りこう言った。
「この道、まっすぐ行ったら駅だから。踏切を渡らずに右。そうすると阪急岡本駅だから。」
めっちゃ優しいおっちゃん。これだから山やってる人と仲良くなるのをやめられない。
お礼をちゃんと言いたかったけれど、喉がおかしく、痰の絡んだ混濁した声で
「ありがとうございますぅ」
としかいえなかった。
絶対にこのおっちゃんにうつすわけにはいかぬ、自宅療養期間は終わってるけれどまだウイルスあると思うし。と警戒しながらのマスク越しのお礼だったので、ちょっと何言ってるかわからなかったかも。
ありがとうおっちゃん。また会おうねー。
帰りに気持ち悪いバッタの風見鶏を見つけた。
今まで見た風見鶏の中でダントツに気持ち悪い。
これはすごい。何でこんなものを作ろうとしたのだろう。
風が吹いたらこのリアルなバッタがくるくると回るのだろうか。恐ろしい。こんな家いやだ。
とにかく、ほくら神社はよかった。
これはリピートあり。