まっきんのブログ

衝動高めの学生の【神戸街ブラ】【日常】【珍スポ巡り】

注文の多いステーキ料理店

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こんにちは。そろそろ父の日がやってくる頃。去年の母の誕生日にはお高いランチを奢ってあげたが、父にはミッフィーのペットボトルケースをあげたのみ。母は嬉し泣きをしていたが、お父さんは陰ですすり泣きをしていたかもしれない。

こんなふうに父母の格差が開くのは、フェアじゃない。

だからこの格差を埋めるため...いやちがう。

齢23のこの私をまだ養ってくれている、優しい父親へ感謝を込めて、高級ディナーをプレゼントしようと私は思い立った。

 

予想値段にドン引き

食事をプレゼントすることの難点は、1人分だけ奢るのが難しいことだ。

ちなみに私が行きたいディナーは高級ステーキ店。1人9000円。それを家族全員に奢るとなると、36000円。それにドリンク代もついたらどんな値段になるんだ。こわいよ。

だって私....働いてないのはもちろん、バイトもしてない。ただ家で食って寝て夜に学校に行くだけの人。

お金は減る一方なのに、家族へのホスピタリティが高いのが私の謎なところだ。

 

ルール①5分前集合

わたしが狙っている店は完全予約制なので、当日いきなりいくことはできない。

なので予約のため電話をかけてみる。するとぶっきらぼうな声の女性が

「時間の5分前にはきてください。あと全員同じコースにしてください。」と要請してきた。

「!?(同じコースにしろだと...?)すみません、コースはまだ決まってないのでかけ直してもいいですか?」と聞くと

「いつごろかけてきますか?」とのこと。

(自分の好きなときにかけちゃダメなの!?)と思いながら、了承する。

 

高級店というと、店員がホテルマンみたいに愛想よく全部お客さんに合わせてくれるものなのかな、と思っていたのでこの対応の仕方には驚いた。

 

電話を切ったあとも「なんだあの言い方は。もうキャンセルしてやろうかな」

とも思ったが、「この県で1番美味いぜ、あの店は。」と食通の店長が教えてくれたのを思い出した。

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地域1番のステーキ、、やっぱり食べてみたい。結局キャンセルはしないことにした。

 

〜当日〜

この日までずっと「大金払わなくちゃ....」「またあの女店員にきついこと言われるかも..」と楽しみなはずのディナーなのに、ちょっと気が重かった。

それと、「絶対に遅刻できない」というプレッシャーもあった。大体の店は多少の遅刻も許してくれるが、この店でそんなことすると怒られるに違いない。

 

だから私は1週間前から家族みんなに「ディナーの日は5分前集合だからね」と呼びかけていた。うちの家族はめちゃくちゃ時間にルーズだから、前もって言っておかないと完全アウトだ。

 

なのにうちの中3の弟は、約束の1時間前になって

「お腹ギュルギュル言ってる。俺、後から行くわ」と勝手なことを言い出した。

「なんでお腹壊したん」と聞くと

「朝食べたベーコンのせい。」

と返ってきた。

そう、彼はこの日信じられないことに、台所の床に落とした加熱前のベーコンを拾い、あむりと食べていた。

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私はあんぐり、彼はハングリー、でもでもそれは危険な行為。

私の中のDJがラップを刻んでいる。

 

とにかく弟だけ遅刻フラグビンビンだったが、私と両親は彼に構わず先に家を出ることにした。

 

ルール②消毒必須

約束5分前に着いた私たちと、約束の時間ぴったりに到着した弟。

それでも私は弟に激甘なので

「すごいやん、ちゃんと時間に着いたやん」と、店のルールガン無視で彼を褒め称えた。

 

一方、お母さんは店の前のアルコールに気付かず入店しようとしていたので、

すぐさまあの女店員がやってきて

「消毒してください」

と言っているのが見えた。

ああ、早速つつかれたか。この店はルールが多いしお客さまは神様じゃない。

店のルールに合わせられる客しか食べてはいけないのだ。

いやもちろん消毒は当たり前だよ?当たり前だけど言い方ってもんがあるじゃん!!

真顔でぶっきらぼうに指摘されると怖いんだよなぁ。。

 

ルール③食べ残す=出禁

目の前には鉄板、私たちはカウンター席に横並びに座り、どんな料理が来るかと待ち構えてた。

すると山﨑まさよしみたいな店長がやってきて

「私の店は完全に趣味でやってます。利益目的じゃないです。また、食べ物を残したらもう2度と予約できません。

 

とたんに静かになる私たち。

(うちの家族向きではない店だな...)

 

なぜならお母さんは食べ物を残しやすいからだ。食べきれなかったり、衛生面に不安を感じたときには抵抗なくお残しする。

それをみて育ったうちの弟も、食べ物を残すのにそんなに抵抗がない。(あんまり許された行為ではないと思うけれど)

 

これは緊張が走る。なんとしてでも全部食べてもらわねば。

あと言われていないがゲームも禁止だと思う。弟はいつも料理が来るまでの時間はずっとゲームをしているが、ここでそんなことをしたらナイフが飛んでくるだろう。

 

うちの家はだいぶゆるいので、急に厳しめの店に行くとアレルギー反応が出ないか心配だ。

 

全てを食べようとする父

ようやく鉄板焼きが始まった。生きたアワビがうねりながら焼かれていく。

 

隣にいる父が手をすり合わせて

「なんまんだ、なんまんだ」と小さな声で唱えたのを私は聞き逃さなかった。

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一方焼いている側の店長、うんちくがとまらない。

「この長芋はどこどこ産で...」

「他の店だとアワビが硬すぎて食べれたもんじゃない。これぐらい新鮮じゃないとダメ。5分以内に食べてください」

「○○牛、あれはだめ。あの有名な焼肉屋も昔は良かったけど今は味が落ちた。ここらへんで美味しい店なんかひとつもないですよ。」

 

お母さんが「えー、あの店すっごく美味しいと思って食べてたのに〜」

お父さんが美味しいと言ってよく買ってきてくれた○○牛も、店長は低評価にしていたので

「なんかショックだなぁ...」と父が漏らしていた。

(そんなことないよ、自分が美味しいと思ったら美味しいんだって!こだわりが強い人はわかりすぎて損なんだよ。)

と言いたかったけど、もう店長ワールドすぎて口を挟めない。反論しようと思うもんなら彼の機嫌が悪くなりそうな雰囲気。

 

とにかく知識のひけらかしと他店の悪口がすごい。悪口というか正直な批評だと思うのだが、今までそれを美味しいと思っていて食べていた私たちにとっては気分の良くなるものじゃなかった。

 

それらのうんちくを聞きながら、最後の方はめんどくさくなって「へー、なるほど」「すごーい」「おいしいー」を連呼する私たち。

(食事ってもっと自由でいいのでは...?)

と思ったが、この店ではそれは通用しない。

 

そしてあれだけ「残してはいけない」と思っていたからだろう、ずっと黙々と食べていた父がおずおずと口を開いた。

「あの、、この殻も食べないといけないんでしょうか」

と言いながら、彼はオマール海老の殻を指差す。

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「いやそれは食べなくて結構です」と店員。

そりゃそうだろう。なんでそんなでっかい殻まで食べなくちゃいけないんだ。もしそれも食べろというのなら、それはもう罰ゲームの域である。

 

お客様は神様じゃない

肉を焼いてくれる時間も、ずっと喋り続ける店長。

 

 

「お肉の焼き加減を注文してくるお客さんがいますが、そんなのはホテルに行ってわがまま聞いてもらってください。」

と強気な様子。

 

(...!)
いつも焦げるまで肉を焼いてもらう母にとってこれはピンチ。

 

自由に焼き加減を選べるブロンコビリー、あれは贅沢だったんだな...としみじみ思う。

 

全部食べようとする父

さっきは海老の殻を食べなければならないか確認していた父だが、デザートの時間にも

「あの、、これは食べなくても大丈夫でしょうか..」と飾りのバラを指差しながら尋ねていた。

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「これも食べなくて大丈夫です」

ぶっきらぼうな女性店員が答える。

 

かわいそうにお父さん、ひとつでも残したら出禁にされると思って、絶対食べなくていいものまで食べた方がいいかまた聞いてる。

 

 

会計の時間

家族全員、残さず食べて、ひとまず出禁は免れた。ふぅ。ようやく一安心。

 

伝票が渡された。

ちらりと見ると

そこには 45000円 という数字が。

たっか。

もう一生こういう店に来ないかもしれない。経験代ということで支払った。

味は本当に美味しいけど高いし、店長も喋りすぎるからわたしとしては2度目はないかな。

ちなみに父は2度目ありって言ってたけど。

やっぱりお酒と肉がうまいからかな。

 

今度はちゃんと働いてからご馳走します。